不育症
妊娠はするけれども、2回以上の流産、死産、もしくは生後1週間以内に死亡する早期新生児死亡によって児が得られない場合を不育症といいます。
頻度
流産は、妊娠の10~20%の頻度で起こり、妊娠歴のある35~79歳の女性のうち、4.2%の方が2回以上の流産を経験しています。女性の加齢とともに胎児染色体異常が増加するため、頻度も加齢とともに増加し、40歳代の流産は50%という報告もあります。妊娠・出産が減少した一方で、妊娠女性の高齢化により、流産率は増加しており、不育症は決して珍しいものではありません。
リスク因子
妊娠初期の80%の流産の原因は、胎児(受精卵)の偶発的な染色体異常とされていますが、流産を繰り返す場合には、その他に流産しやすくなる「リスク因子」を有する場合があります。
リスク因子の主なものとして、母体の高齢年齢や子宮形態異常、内分泌異常、凝固異常、その他、夫婦染色体異常などが挙げられています。
治療
検査の結果、特段のリスク因子がない方は、次回妊娠の可能性が高いと言われています。
厚生労働省研究班の研究によると、リスク因子を調べて原因がはっきりした方には、以下のような治療方法が提示されています。
- 子宮形態異常
必ずしも治療の必要性があるとは言われていませんが、中には、手術を行うと、妊娠成功率が高くなる方もいるため、個々の状況に応じた総合的・専門的な判断が必要です。 - 内分泌異常
甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症では、機能が正常になってから妊娠することが重要です。
妊娠後も引き続き治療を受けることが必要になります。 - 染色体異常
染色体正常児を妊娠する確率や、着床前診断等のメリット、デメリット等をよく確認した上で、染色体異常の種類に応じた、今後の方針を決める必要があるため、十分な遺伝カウンセリングを行うことが大切です。 - 凝固異常
凝固異常のうち、抗リン脂質抗体症候群では、妊娠中の血栓のリスクが高まると言われており、低用量アスピリン(抗炎症薬)とヘパリン(抗血栓剤)の併用療法が有効とされています。
不育症の検査や治療にかかる費用負担が大きいため、市では費用の一部助成を行っています。
詳細は、健康づくり課(電話番号:0293-24-2121)までお問い合わせください。
不妊について
なんらかの治療をしないと、それ以降自然に妊娠する可能性がほとんどない状態を「不妊症」といいます。
一般的には、「1年間の不妊期間を持つもの」と定義されています。
頻度
子どもを持ちたいと思いつつ、なかなか妊娠しない夫婦は、10組に1人とも、5組に1人ともいわれており、調査によると全体の9%が不妊症と推定されています。女性の妊娠年齢が高くなるほど、不妊の確率は高まる傾向にあります。
リスク因子
不妊症の原因には、「女性不妊」、「男性不妊」、「原因不明」のものがあります。
女性不妊症について
女性の不妊症の原因には、排卵因子(排卵障害)、卵管因子(閉塞、狭窄、癒着)、子宮因子(子宮筋腫、子宮内膜ポリープ等)、経管因子(子宮経管炎、子宮経管からの粘液分泌異常等)、免疫因子(抗精子抗体)等があります。
治療
精子と卵子に妊孕性が残っている場合であれば、以下のような治療方法が有効であるといわれています。
また、不妊の原因は1つとは限らないこともあるので、医師とよく相談しながら治療を進めていくことをお勧めします。
- タイミング法
排卵日の2日前から排卵日までに性交渉があると妊娠しやすいといわれているため、排卵日を診断して性交のタイミングを合わせる治療です。 - 排卵誘発法
内服薬や注射で卵巣を刺激して排卵を起こさせる方法です。 - 人工授精
用手的に採取した精子から、運動している成熟精子だけを洗浄・回収して妊娠しやすい期間にチューブで子宮内に注入して妊娠を試みる方法です。 - 体外受精
採卵手術により、排卵前に体内から取り出した卵子と精子の受精を体外で行う治療です。 - 顕微授精
体外受精を実施しても妊娠しなかった方が対象になります。
細いガラス針の先端に1個の精子を入れて、顕微鏡で確認しながら卵子に直接注入します。
男性不妊症について
不妊症は男女ともが原因になりうることで、不妊治療は夫婦揃って行うのが望ましいとされています。
頻度
WHO(世界保健機関)が1998年に発表した不妊症原因の統計によると、不妊症のリスク因子は40%が女性側、24%が男女ともにあり、24%が男性側、11%が原因不明となっています。
リスク因子
男性の不妊症の原因は、「射精がうまくいかない場合(性機能障害)」と、「射精される精液の中の精子の数や運動率が低下している場合(精液性状低下)」に分けられ、後者は、『軽度・中等度』と、『高度及び無精子症』に分けられます。
治療
(1) 性機能障害
ストレスの他、動脈硬化や糖尿病等が原因となって起こるといわれています。
- 抗うつ薬、PDE-5阻害薬(勃起不全治療薬)等の薬物療法
- 射精障害に対する治療
- 人工授精
(2) 軽度~中等度の精液性状低下
- 内科的治療
生活習慣等、男性不妊の原因になりうる因子の除去や内分泌療法。 - 人工授精
- 手術療法
(3)高度の精液性状低下、無精子症
- 精巣精子採取術+顕微授精
様々な方法を試みても精液中から精子を回収できない場合に行います。
精巣精子採取術や顕微鏡下精巣採取術にて採取した精子は生殖補助医療(顕微授精法)で卵子と受精させることになります。 - 精路再建手術
精路(精子の通り道)に閉塞がある場合に、その部位を取り除いて精路を再建します。
その閉塞部位によって方法が異なります。
(精管精管吻合術、精管精巣上体吻合術、射精管解放術) - その他
非配偶者間人工授精など。
令和4年4月より不妊治療に保険が適用されます。
人工授精等の「一般不妊治療」、体外受精・顕微授精等の「特定不妊治療」について令和4年4月1日より保険が適用されます。
詳細につきましては、下記厚生労働省のホームページを御確認下さい。
- 不妊治療に関する取組(新しいウインドウが開きます)
茨城県では不妊専門相談センターを設けています。
詳しくは下記のページをご覧ください。