妊娠が成立することは奇跡に近いこと、ということをご存知ですか。
無事に妊娠することは人類の神秘ともいわれています。
妊娠のプロセス
「卵子と精子が出会い、受精卵となり、妊娠が成立する」ということは多くの方が知っていると思いますが、この卵子と精子がタイミングよく出会うということ、これがとても重要です。
その理由は大きく分けて、卵子が受精できるのは排卵後約24時間であること・精子が卵子に出会うまでの道のりは過酷であることの二つがあります。
まず、卵子が受精できるのは排卵後約24時間ですが、
成熟して排卵された卵子には約一日しか受精できる時間がありません。
成熟した卵子が精子に出会わなければ排出され、月経が起こります。
次に、精子が卵子に出会うまでの道のりは過酷であることですが、
射精された数億の精子のうち、卵子と通常出会う卵管膨大部に到達できる数は数百個です。左右にある卵巣のうち、その時排卵していない卵管をのぼってしまった精子も卵子とは出会えません。
成熟した卵子にたどりついたとしても、卵子を取り囲む何層もの膜を破り、通過しなければなりません。膜を破って最初に飛び込むことが出来た精子が卵子と結ばれて受精できるのですが、卵子の膜を破るためには多数の精子が必要で、卵子までたどりつけた精子の数が少ない場合にも受精には至りません。
精子が受精できるのは約48時間から72時間(約2~3日)であり、その期間から外れて卵子と出会っても受精することはできません。
このように、受精に至るまでには卵子と精子がタイミングよく出会うということが重要なのです。
卵子について
成熟する前の卵子(ただしくは卵子へと分化することが可能な一次卵母細胞)の数は胎児の頃からすでにその数が決められていて、排卵などによりその数は減りつづけ、増えることがありません。卵子がなくなれば閉経となります。
つまり、新しく産生されつづける精子とは異なり、卵子は年齢とともに年を重ねていくのです。加齢により妊娠の成立に対する能力にも変化が生じます。妊娠を希望して夫婦生活を開始してから妊娠までの週期数は、年齢が高くなるにつれて必要とする期間は増加します。染色体異常などの発生率が上がることや受精卵になっても上手く着床・成長できないということも多くなります。
しかし、たとえ受精し、胎嚢(たいのう/赤ちゃんが育つふくろ)を認めたとしても、10%以上は流産の可能性を持っていることを知っておいて下さい。
6週頃には心拍を確認でき、流産のリスクが減るものの、それでも心拍が消失してしまうことがあります。
順調に妊娠8週を過ぎてやっと流産の可能性が1%以下になります。
生まれるために産道を通って出てくる、ということは赤ちゃんにとって最初の大きな仕事です。
約280日の間、お母さんのお腹の中で過ごした赤ちゃんが母体に陣痛を起こすホルモンを出し、出産に臨みます。
つまり、赤ちゃんは自ら生まれることを決意してお腹の中から出てくるのです。
妊娠にいたるまで、また、お腹の中で育つ赤ちゃんが無事に産まれてくるまでには様々なドラマがあり、奇跡的なことだ、ということを知っていただけたでしょうか。
医療事情が発達した現代では「出産は命がけ」との言葉をあまり聞かなくなりましたが、今も昔も出産がお母さんにとっても赤ちゃんにとっても大きな仕事であることに変わりはありません。
陣痛の苦しみに耐えて生み出そうとする母親の力、
生まれようとする赤ちゃんのたくましい力。
みんな愛するために産み、愛されるために生まれてきます。
どんな赤ちゃんも愛情をいっぱい受けて幸せに育って欲しいですね。
参考文献/株式会社 医学書院 発行
『系統看護学講座 専門分野2 母性看護学1
母性看護学2』